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人工関節置換術

膝関節の疾患

膝関節のしくみ

膝関節のしくみ

膝関節は、太ももの骨(大腿骨)の先端が、すねの骨(脛骨)の平らな面の上を滑りながら転がることによって、大腿骨と脛骨が真っ直ぐに伸びた位置(完全伸展位)から正座の様に深く曲げた位置(深屈曲位)まで、大きな動きが可能です。そして、この2つの骨の前に「お皿」(膝蓋骨)と呼ばれる3個目の骨があり、太ももの筋肉(大腿四頭筋)が膝を伸ばそうとする力を脛骨に伝え、膝を動かしています。この3つの骨の表面は柔らかく滑らかな軟骨で覆われ、関節がスムースに動くようにできています。更に、脛骨と大腿骨の間にはクッションの役目をする半月板が存在し、関節に加わる衝撃を吸収しています。


膝関節疾患について

膝関節の疾患には外傷によるもの、炎症によるもの、腫瘍によるものなど様々なものがありますが、頻度も高く、日常生活でも著しい痛みを生じる主な疾患として、次のものがあります。

●変形性膝関節症

膝関節は、毎日体重をかけながら動かすため、何年も使っていると、やはり老化します。軟骨が徐々に擦り減り、それが進むと更にその下の骨も擦り減ってきます。そして関節の表面がデコボコになり、滑らかな動きが障害されるのが変形性膝関節症です。体重のかかり方から内側の軟骨ばかりが擦り減り、徐々にO脚になることが多いのが特徴です。

変形性膝関節症

●関節リウマチ

指、手関節、肘、膝、足関節、更には脊椎の関節など、全身の関節が炎症を起こす疾患が関節リウマチです。初期の症状は関節炎に伴う腫れと痛みですが、進行すると関節の軟骨やその下の骨が障害され、関節の脱臼や変形を生じてきます。膝関節ではリウマチが進行すると膝が伸びなくなったり、変形と痛みのために歩行が出来なくなったりします。

人工膝関節全置換術とは

変形性膝関節症や関節リウマチの治療には、以下の治療が選択できます。しかし、変形が強い場合では、対処療法に抵抗性のため、痛みをとることは困難です。人工関節に置き換えることが、確実に痛みをとる方法と考えます。

選択可能な治療

●保存療法

軽度~中等度の場合、下肢の筋力をきたえる理学療法に加え、鎮痛剤や湿布薬、ヒアルロン酸ナトリウムの関節注入や足底板という装具療法で治療可能。これらの治療でも改善しない場合は手術療法が必要となります。


●関節鏡視下滑膜切除

いわゆる関節内のお掃除です。軽度~中等度の場合の患者さんの場合には、保存療法との併用で症状が改善する方がいます。しかし、根治的な治療ではありません。


●高位脛骨骨切り術

活動的な60才以下で病期が進んでいない患者さんには、高位脛骨骨切り術といって、脛骨(すねの骨)を骨切りし、外側に骨を傾けることにより、内側に片寄っていた荷重線(体重のかかる方向)を外側に分散させ痛みを減らす治療法が行われます。


●人工膝関節単顆置換術

もう少し病期が進めば内側または外側のみの人工関節で治療します。人工膝関節単顆置換術(UKA)といって病変のある内側のみ小さな人工関節で置き換えます。しかし、最も変形が進んだ段階になれば人工膝関節全置換を行はなければ治りません。


人工膝関節(ひざかんせつ)全置換術とは

人工膝関節置換術では、変形性膝関節症や関節リウマチによって変形した膝関節の表面を取り除き、関節が滑らかに動くように正常の膝関節の表面に似た形に設計されたインプラントと呼ばれる部品に置き換えます。
インプラントは大腿骨部、脛骨部、膝蓋骨部の3つの部分から成っています。大腿骨部と脛骨部の本体は金属で出来ていますが、脛骨部の上面と膝蓋骨の表面はポリエチレンでできていて、これが軟骨の代わりになります。
また変形性膝関節症に伴って生じたO脚も、手術の際に出来るだけまっすぐになる様に矯正します。
当院で主に使用している機種は、日欧米で多数使用され、安定した成績を残している標準的な機種のひとつです。日本式の生活に合わせた深屈曲対応タイプのものも開発され、当院でも使用しています。
使用するインプラントは障害の程度によって異なります。障害の程度が比較的軽い場合は骨の表面だけを削って置き換えますが、膝関節の破壊が進み、障害が著しい場合には、擦り減った骨を補充するためなどに複雑な膝関節部品が必要になります。

人工膝関節(ひざかんせつ)全置換術とは

手術の流れ

手術の流れ

手術前(外来にて)

  • 膝の診察

    外来にて手術に必要な検査を受けます。服用しているくすりがあれば必ずスタッフにお伝えください。

  • 自己血貯血

    輸血について:手術中および手術後には、輸血を必要とする可能性があります。 当院では、手術の前に自分の血液を採っておき、手術後にそれを輸血する方法です。

  • インフォームドコンセント

    医師から資料を使って術前説明があります。

  • 入院

    医師から資料を使って術前説明があります。

合併症

麻酔のリスク、感染、深部静脈血栓症、肺塞栓症、出血ならびに輸血のリスク、関節可動域制限、ゆるみ、骨折、金属セメントアレルギーなど


入院

手術の数日前から入院していただき、術前の指導やリハビリテーションを行なっていただきます。手術前日は夜9時以降の飲水食ができなくなります。

  • 手術準備

    当日、腕に点滴(静脈ライン)を挿入します。これは、手術中に抗生物質やその他のくすりを投与するのに使います。

  • 麻酔

    手術室に入ると麻酔がおこなわれます。麻酔は基本的に全身麻酔と腰からの麻酔を併用して行ないます。麻酔が十分に効いてきたら、消毒液を使って膝のまわりを消毒します。

  • 止血

    手術中に出血しないよう駆血帯を使って、手術する下肢の血流を一時的に止血します。

  • 皮膚切開

    膝の関節が見えるように皮膚を切開します。(約12cm~15cm)
    損傷骨の切除:骨がすべて見える状態になったら、専用の精密な器具を使って損傷のある部分を取り除き、インプラント(人工膝関節部品)に合わせて骨の端の部分の形を整えます。
    人工関節の固定:骨の切除が済むとインプラントを骨に固定します。当院では骨とインプラントはセメントにて固定を行なっています。膝が良い状態で機能するように、膝のまわりにある靭帯も調節する必要があります。

  • 縫合

    医師はインプラントがしっかり固定され、十分に機能することを確かめると、切開した部分を縫合します。

  • 手術終了

    手術後の血液を外へ流し出すために、専用の排液管(ドレーン)を傷口に挿入することがあります。その後、傷口を滅菌包帯でおおい、手術を終了します。
    手術にかかる時間はおよそ2~3時間で、個々の状況によって変わります。
    手術中に、術前に貯血した自己血をゆっくり返血します。

  • 手術後

    麻酔が覚めてくると、ゆっくりと意識が回復してきます。肺の中の空気をきれいにするために、咳や深呼吸をするよう促します。数時間酸素マスクをしていただきます。 また、手術直後の痛みを取り除くため、痛み止めのくすりを使います。

  • 病室へ

    麻酔が覚めたら、レントゲンを撮ってから病室へ戻ります。手術直後は頻繁に血圧や体温を測ったりします。 深部静脈血栓症の予防のため、手術室で弾性ストッキングを履いてきます。足の裏を断続的に圧迫するフットポンプも帰室次第使用します。術後数日後から血を固まりにくくする薬を注射して予防します。 何よりも術直後から、よく足首を動かすことが大切です。

  • リハビリ

    手術翌日から痛みにあわせて少しずつリハビリが始まります。リハビリによって、膝の力、バランス、可動域(動かすことができる範囲)を効果的に回復させることができます。また、理学療法士が最適な運動をおこなう手助けをしてくれます。

  • 退院

    通常、2週間で包帯を外して抜糸します。 痛み歩行の回復が十分であると医師が判断したら、まもなく退院することができます。

自己血輸血について

手術までの期間が充分あり、造血能力が良好な場合には、「自己血輸血」をお勧めします。あらかじめ自分の血液を採血して保存しておき必要時にそれを輸血する「自分への献血」です。

自己血輸血の方法・スケジュール

採血前日当日の注意点

採血前日には十分に睡眠を取るようにしてください。当日も食事をきちんと取ってください。また心臓や血圧や糖尿病の薬を使用している方はいつも通りに服用してください。


採血後の注意点

採血時・後に稀に血圧低下・気分不快・冷汗など(血管迷走神経反射)があることがあります。気分が悪くなったら横になって安静にしてください。また、激しい運動や飲酒は避けてください。

採血後の注意点

リハビリテーション

リハビリの目的

関節の安定を保つ役割を果たしている筋肉や腱は、動かさないとすぐに弱ってしまいます。リハビリを行うことによって、筋肉を強くし、また、術後の拘縮(固まって動かしにくくなること)を防いで、早く日常生活へ復帰することができます。

開始時期

大体手術の翌日~2日目までにリハビリを開始します。


リハビリの種類病室で

  • 膝を曲げる機械(CPM)を使って膝の曲げ伸ばしを行う訓練
  • 足を垂直にあげるなど簡単な運動
  • 歩行器を使った歩行訓練

リハビリ訓練室で

  • 平行棒を使った歩行訓練
  • 杖を使った歩行訓練
  • 階段を昇る訓練

リハビリのプログラム例

膝を伸ばしたまま、ベッドに座ることができます。膝の経過が良好であれば、CPMを使って、ゆっくり膝を曲げ伸ばしします。ベッド上で足に力を入れるなど簡単な運動を続けます。この頃には、看護士や理学療法士の介助で車椅子に乗ったり、手洗いに行けるようになります。

リハビリ訓練室で本格的なリハビリ

  • 平行棒を使った歩行訓練
  • 歩行器を使った歩行訓練
  • 杖を使った歩行訓練
  • 階段を昇り降りする訓練